第10回毎日パソコン入力コンクール 秋季大会 第6部 和文B(文字数1,700字程度) 平成22年4月20日付、4月19日付 毎日新聞社説・余録より引用 空の大混乱 想定外リスクを教訓に 社説:空の大混乱 想定外リスクを教訓に  アイスランドの火山噴火によって欧州を中心に航空機が運航停止を余儀なくされ、被害が多方面に及んでいる。運航再開は、噴煙の状況をみて判断するしかないものの、今回の噴火については、北半球全体の気候に及ぼす影響も指摘されている。私たちの生活は、想定外のリスクと背中合わせであることを、今回の噴火によって改めて認識させられた。  世界の航空輸送にとってハブ的存在の欧州で、ほとんどの空港が閉鎖に追い込まれ、乗客が足止めを食っている。欧州では、列車やフェリーなどが大混雑している。  しかし、欧州は広く、それをカバーしている航空輸送を代替できるほどの能力が、列車やフェリーにあるわけではない。欧州以外の地域との旅客輸送となると、航空機に代わる手段は考えられないのが実情だ。  貨物への影響も甚大だ。医薬品、生鮮食品、電子部品など、多くの産業が航空輸送に依存している。欧州以外からは調達困難なものも多い。国際会議やスポーツなどのイベントへの影響も広がっている。  日本でも、多くの人たちが空港のロビーで運航再開を待ち続けている。オランダからの花の輸入がストップしてブライダル産業が影響を受けたり、保存がきかない医薬品が入手できなくなり、検査業務に支障が出ている医療機関もあるようだ。  アイスランドでの噴火がいつまで続くのかは不明で、日本ではゴールデンウイークが迫っており、旅行産業への影響も気がかりだ。  最も打撃を受けているのが航空業界で、損害は同時多発テロの9・11以上という。経済危機で航空需要が落ち込み、世界の航空会社は軒並み赤字という状況下での今回の運航停止だ。  欧州の航空会社は試験飛行を行い、航空当局に運航再開を働きかけている。しかし、エンジン停止に陥る可能性もあるだけに、欧州の航空当局が慎重に対応しているのは、やむを得ない。  地質が安定している北部欧州は、地震の心配がまずない。火山国で地震が多い日本からは、地殻の変動から受ける影響が少ない地域に思われていた。  ところが、その北西にあるアイスランドには、マグマが噴き出す大地の裂け目があり、大噴火が起こると偏西風にのって噴煙が欧州に向かう。しかも、航空機がジェット化され、プロペラ機と違い噴煙に弱い。それが重なった。  自然災害からの影響を軽減するため、さまざまな対策がとられてきた。しかし、新たなリスクを抱え込むこともある。欧州から世界に広がった空の大混乱は、そうしたことも、私たちに告げている。 毎日新聞 2010年4月20日 余録:春の宵、天文台の望遠鏡で…  春の宵、天文台の望遠鏡で土星を眺めた。昨年は輪が消えて見える「消失現象」が起きたが、今は戻ってきた細い線がくっきり。「あ、輪が見えた」。子どもでなくても歓声をあげたくなる▲不思議なリングを持つ惑星の周りを、ここ数年、無人探査機「カッシーニ」が回っている。最近の観測で、輪に鉄や炭素の化合物が含まれる可能性もわかった。できることなら近くで見てみたい。だが、いかんせん遠すぎる▲もう少し近場ならどうだろう。米国のオバマ大統領が公表した新宇宙計画では、15年以内に新型宇宙船を開発し、まずは小惑星を訪ねる。30年代の半ばには火星の軌道に人を送り込めるはず、という。ブッシュ政権は月の再訪を打ち出していたが、「月にはもう行った」とばっさりだ▲それにしても、なぜ火星を目指すのか。単純な理由は、月の向こうに人間が降り立てそうな大型天体は他にないからだ。何はともあれ、ゴールを掲げておかないと走れない、という見方もある。大きな目標を失うと、宇宙大国としてのアイデンティティーが揺らぎかねない▲現実的な見方をすれば、雇用確保のためでもある。2月に有人月探査計画中止を打ち出した時には、失業者の増加が心配された。今回の演説では、1万人以上の雇用創出を強調するなど、随所に配慮がのぞく▲カッシーニは今年、さらなる延命が決まった。オバマ大統領は無人探査の強化も打ち出している。ケネディ大統領が「私たちは月へ行く」と高らかに宣言したのは1961年。同じ年に生まれたオバマ大統領は、火星行きを宣言した人物として名を残すのか。先行きはまだ見えない。 毎日新聞 2010年4月19日