第8回毎日パソコン入力コンクール 6月大会 第6部 和文B(文字数1,800字程度) 平成20年2月17日、1月27日付 毎日新聞社説・余録より引用 成人年齢18歳 対象ごとに幅広い論議が要る 社説:成人年齢18歳 対象ごとに幅広い論議が要る  民法を改正して成年を18歳に引き下げるべきか、現行の20歳に据え置くべきか。鳩山邦夫法相が、社会通念を根底から問い直す一大テーマを法制審議会に諮問した。  昨年5月に成立した国民投票法が、18歳以上に投票権を与えたのがきっかけだ。いわば与野党の駆け引きから浮上した問題ではあるが、社会情勢が大きく変化する中で「おとな」の法的基準を考え直すことは、市民生活にとっても有意義だ。  満20歳を成年とする考え方は1876(明治9)年の太政官布告に由来し、1896(同29)年制定の民法に規定された。教育の普及、体位の向上などを背景に前々から「引き下げ論」が取りざたされていたが、一方で若者の精神的成熟度への懸念や就業率の低下傾向などを理由とする慎重論も幅を利かせている。平均寿命が延びたのに、保護すべき期間を短縮するのは不自然とする意見もある。  しかし、義務教育化している高校を多くの人が卒業する18歳は、画期と言っていい。成年を引き下げれば、若者に自覚を促し、行動に責任を持たせる教育的効果も期待できる。高齢化が進む折、若年層の社会への一層の貢献が望まれることも考慮すべきだ。世界各国を見回しても、「成年18歳」は潮流となっており、日本が20歳にとどめる合理的な理由も見いだしにくい。  とするならば、少なくとも投票権などの民主主義社会に参画する権利と義務に関しては、成年を18歳に引き下げることを妥当としても支障はあるまい。  だからといって、成年を一律にとらえて何もかも18歳に引き下げればよい、というものではない。飲酒、喫煙の解禁年齢の引き下げには、慎重で科学的な分析、検討が欠かせない。  結婚年齢についても、世論の合意が容易に形成されるとは考えにくい。18歳を成年にすると、男は成人するまで結婚できず、女は未成年でも結婚できる代わりに親の許可が必要な時期が残る。その男女差を平等原理の中でどのように位置づけるべきなのか。難問と言わざるを得ない。  成年を引き下げれば、308もの法令が見直しを迫られるという。各方面に及ぶ影響は計り知れない。民法が改正された場合は、各省庁が所管する法律を検討する手はずというが、百有余年の常識を変更しようとする試みだけに、国民的な議論が必要不可欠だ。  民法の見直し論議を法制審議会だけに任せることにも疑問がある。法務省などは世論調査や各方面の専門家らの意見聴取を通じ、社会の実勢と世論の動向の把握に努めなければならない。国家百年の大計となるだけに、幅広い議論が醸成されるのを待つべきは言うまでもなく、間違っても国民投票法の施行が迫ることを理由に結論を急いではならない。 毎日新聞 2008年2月17日 余録:見も知らぬ人と交流したい…  見も知らぬ人と交流したい。人間はそうした願いを本質的に持つ生き物なのだろうか。風船に手紙を結んで大空に飛ばす。びんに手紙を入れて大海に流す。それを拾った人との間につきあいが生まれたという話は決してめずらしくない▲それにしても、風船につけて飛ばした手紙が15年ぶりに海から戻ってきたという話には驚く。水深1000メートル付近から水揚げされたカレイの背中に張り付いていたというから不思議だ。小学校1年生の時にこの手紙を飛ばした白髭(しらひげ)奈津実さんが「すてきな話」と喜ぶのもうなずける▲見も知らぬ「地球外知的生命」とも交流したい。そんな願いを載せて宇宙空間を飛び続けている探査機もある。30年以上前に地球を飛び立った「ボイジャー」1号と2号だ。搭載された金色のレコードには、地球上の生命や文化を紹介する音や画像が収録されている▲波の音、雷、鳥の歌や象の鳴き声。母親と乳飲み子の写真、イルカ、子供たちのいる学校の教室。日本の尺八の演奏や各国のあいさつもある。天文学者のカール・セーガンが委員長を務めた委員会が選んだ伝言だ▲ボイジャーは地球から百数十億キロ離れ、深宇宙を旅している。それでも地球外知的生命を期待するのは早すぎる。白髭さんの手紙は本人の手に戻ったが、ボイジャーの伝言への返事を受け取ることができるのは遠い未来の人類だ▲スイスのダボス会議では福田康夫首相が温暖化対策を強調した。温暖化への取り組みは人類と地球の未来を左右する一つの鍵だ。知的生命が金色のレコードを受け取った時、そこに見る生命や文化が消え果てているとすればなんだかさびしい話である。 毎日新聞 2008年1月27日